Columnコラム
【My EFL+】元パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんインタビュー①
SOYCLEコラムの新シリーズ『My EFL+』をスタートします!
My EFL+ (My Ecofriendly Lifestyle)では、「私にとってのエコフレンドリーな暮らし」をテーマに、ゲストにとってエコフレンドリーな暮らしがどんなものか、何をもたらしてくれるのかをインタビュー。
記念すべき第1回は、世界的アウトドアブランドとして知られる『パタゴニア』の元・日本支社長であり、現在は気候変動問題に取り組む企業やNPOのコンサルティングにも尽力されている、社会活動家・辻井隆行さんへインタビュー。前後編の2回に分けてお送りします!
――2014年より「長崎県の石木ダム建設計画見直しを求める活動」に参加したりと、2019年に『パタゴニア』を退社した後も、自身のライフワークとして環境問題に取り組まれている辻井さん。その原点はどこにあるのでしょう?
東京で生まれ育ったせいか自然に対する憧れがあって、アウトドア・スポーツをやりたいと25歳の頃にシーカヤックを始めました。それがきっかけで森林伐採の問題に出合うことになったんです。
カナダのバンクーバー島を、野宿しながらシーカヤックで1ヶ月半くらいかけて1周していたときのことです。バンクーバー島には、高さ100mにもなる大木がそびえる沿岸性温帯雨林が広がっているんですが、人目につかない場所の多くで皆伐が進み、森が丸裸にされていることに気づきました。
自然ってすごく上手に設計されていて、川が適度に曲がりくねったり段差があったりすることで、鮭などの魚が遡上しやすく、卵も産みやすい環境が保たれているんです。バンクーバー島の先住民は森と鮭に依存して生きてきた人々です。それが、近代化が進むにつれて、森が皆伐され、川は真っ直ぐになり、鮭が川を遡れなくなって、先住民の生活も変わっていく。
日本に帰国してからあれこれ調べてみたら、バンクーバー周辺の森林伐採を行う会社がいくつかあって、家の建材に使われたり、パルプの材料になったりと、日本にも多く輸入されていることが分かったんです。でも「素敵なカナディアン・ログハウスに住みたい」と住宅を注文する人に、まったく悪気はないですよね。そういう現代社会の複雑さみたいなことを感じると同時に、日本と世界は繋がっていることを意識するようになりましたね。
――そういった経験をされた後に、『パタゴニア』に入社されるんですね。
その時は『パタゴニア』がミッションに掲げる環境保護について深く考えていたわけではなくて、アウトドアスポーツを優先できる生活スタイルを保ちながらお給料がもらえる、という理由で入社しました(笑)。31歳のときです。
働いてみると良い意味で驚くことが多かったですね。接客マニュアルもなく、「その色、良くお似合いですね」なんて言うスタッフもいない。いつ、どこで、どんな風に使うのか。あくまでも必要なものをお探しするお手伝いをするというスタンスでした。お客様の用途によっては「それなら他社のものの方がいいですよ」と、近隣のアウトドアショップを記した地図を渡したりなんてこともありました。「本当に必要なものだけを買ってもらいたい―」。そういう職場環境にいることで、自分自身の意識も変わっていきました。
それから、それぞれの製品の原材料がどこから来ていて、どんな風に生産地の人々が関わっているのか。そういう製品の背景について話をするスタッフが多いことも印象的でした。
衣服に使うコットンは生産過程で大量の農薬が使用されていること。作り手の労働賃金が安すぎること。プラスティック汚染などの環境破壊が世界中で起きていること。そういったことをパタゴニアで働いた20年間で知り、学ぶことになりました。
――辻井さんのお話は次回、後編に続きます。
【辻井隆行さん Profile】
1968年生。早稲田大学大学院社会学科学研究科(地球社会論)修士課程修了。99年、パートタイムスタッフとしてパタゴニア東京・渋谷ストアに勤務。2000年、正社員として入社。2009年から2019年まで日本支社長を務める。現在は自然と親しむ生活を送りながら、企業やNPOのビジョン・戦略策定を手伝いつつ、『#いしきをかえよう』の発起人の一人として市民による民主主義や未来のあり方を問い直す活動を続ける。2016年、日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。
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